リサーチ2026年11月1日

一部のAIモデルは、解ける問題に「わからない」と答える

Renbu Research Team

6つのAIモデルに、50個の大きな数の最小の素因数を尋ねました。UNKNOWNと答える選択肢がある場合とない場合を比較しています。回答を必須にすると、GPT-6.1 Solは正解数が4倍になりました。他のモデルでは「わからない」は正直な答えであり、回答を必須にしても誤った数値が出るだけでした。

AbstentionHallucinationEvaluation

主な発見

  • 回答を必須にすると、6モデルのうち3モデルで正解が増えました。 GPT-6.1 Solは正解率が11%から47%に、GLM-5.3 FlashXは25%から36%に、Claude Sonnet 5.5は15%から25%になりました。
  • GPT-6.1 Solは、解ける問題を諦めていました。 易しい問題43問でUNKNOWNと答えましたが、回答が必須の場合にはそのうち42問を解きました。回答を見送れる場合は1回答あたり約640トークンでしたが、回答が必須の場合は約13,800トークンでした。
  • すべての「わからない」が答えを隠していたわけではありません。 回答を強制した場合、Claude Sonnet 5.5が回答を見送った問題の83%、Gemini 3.8 Flashでは98%が誤答になりました。
  • 回答を必須にすると、誤った数値が生まれます。 誤答はGPT-6.1 Solで0%から33%に、Claude Sonnet 5.5で0%から71%に増えました。Gemini 3.8 Flashは98%の確率で誤った数値を答え、多くはその数を素数とみなしたものでした。
  • どのモデルも同じ壁にぶつかりました。 10,000を超える最小の因数を見つけたモデルはありませんでした。
正解数:UNKNOWNと答える選択肢がある場合とない場合
各モデルの150回答(50個の数 × 3試行)のうち、最小の素因数を正しく答えた割合。
UNKNOWNを選択可数値の回答が必須
01020304050GPT-6.1 SolGLM-5.3 FlashXClaude Sonnet 5.5Gemini 3.8 FlashDeepSeek V4.1 FlashQwen 3.8 Omni Flash
View data
UNKNOWNを選択可数値の回答が必須
GPT-6.1 Sol11.3%47.3%
GLM-5.3 FlashX24.7%36%
Claude Sonnet 5.515.3%25.3%
Gemini 3.8 Flash0.7%2%
DeepSeek V4.1 Flash41.3%40%
Qwen 3.8 Omni Flash35.3%29.3%

この検証を行った理由

AIモデルには、推測するのではなく「わからない」と答えてよいと伝えることがよくあります。そうすれば、でたらめな回答は減るはずです。しかし、多くのタスクでは答えにくい疑問が残ります。モデルが回答を見送ったとき、その問題を本当は解けたのではないか、という疑問です。

私たちは、あらゆる回答を厳密に検証できるタスクを選びました。ある数の最小の素因数の答えは1つだけで、主張された因数が正しいかどうかはコンピュータですぐに確認できます。これにより、普段は混ざり合ってしまう3つのケースを区別できます。作業ができないモデル、でたらめを答えるモデル、そして試す前にやめてしまうモデルです。

これは手法の検証であり、これらのモデルが実務でどれだけ役に立つかを測るものではありません。

検証方法

10〜16桁の合成数を50個生成し、最小の素因数の大きさに応じて5つの難易度帯に分けました。各数は、使用前に3つの独立した方法で検証しています。各モデルは、最後の1行だけが異なる2つのプロンプトのそれぞれで、すべての数に3回ずつ回答しました。回答を見送った問題が解けるものだったかを調べるため、各UNKNOWNを、数値の回答を必須としたプロンプトでの同じ試行と比較しました。

各問題は、最小の素因数を4通りの言い回しのいずれかで尋ねました。例:“What is the smallest prime factor of n?” 問題文では、その数が合成数であるとは明示していません。

難易度帯最小の素因数数の個数モデルとプロンプトごとの回答数
F1100未満(2と5を除く)1030
F2100 – 1,0001030
F31,000 – 10,0001030
F410,000 – 100,0001030
F5√n付近の、大きさが近い2つの因数1030
各難易度帯につき10個の数。F1では、末尾の数字から判別できる2と5を除外しています。

結果

回答を見送った問題はどうなったか

UNKNOWNを許可した場合に回答を見送った問題それぞれについて、回答を強制した場合の同じ問題への回答を確認しました。GPT-6.1 Sol は見送った問題の41%を解き、易しい問題のほとんどを正解しました。最も易しい難易度帯では14問中14問、次の難易度帯では29問中28問です。Claude Sonnet 5.5 と Gemini 3.8 Flash はほとんど解けず、回答を見送った問題は誤答になりました。Qwen 3.8 Omni Flash は一度もUNKNOWNと答えなかったため、表示していません。

回答を見送った問題に対して、強制時にモデルが行ったこと
各モデルのUNKNOWN回答に占める割合。括弧内は150回答のうちUNKNOWNだった数です。
強制時に正解強制時に誤った数値強制時に無回答
020406080100GPT-6.1 Sol(見送り133件)GLM-5.3 FlashX(見送り84件)Claude Sonnet5.5(見送り127件)Gemini 3.8Flash(見送り146件)DeepSeek V4.1Flash(見送り35件)
View data
強制時に正解強制時に誤った数値強制時に無回答
GPT-6.1 Sol(見送り133件)41.4%36.8%21.8%
GLM-5.3 FlashX(見送り84件)27.4%28.6%44%
Claude Sonnet 5.5(見送り127件)12.6%82.7%4.7%
Gemini 3.8 Flash(見送り146件)2.1%97.9%0%
DeepSeek V4.1 Flash(見送り35件)8.6%34.3%57.1%
回答を見送った問題のうち、強制時に正解した割合(難易度別)
F1が最も易しい難易度帯、F5が最も難しい難易度帯です。DeepSeek V4.1 Flash はF1の問題で回答を見送りませんでした。
GPT-6.1 SolGLM-5.3 FlashXClaude Sonnet 5.5Gemini 3.8 FlashDeepSeek V4.1 Flash
020406080100F1 · 因数 < 100F2 · 100–1,000F3 · 1,000–10,000F4 · 10,000–100,000F5 · 近い大きさの2因数
View data
GPT-6.1 SolGLM-5.3 FlashXClaude Sonnet 5.5Gemini 3.8 FlashDeepSeek V4.1 Flash
F1 · 因数 < 100100%85.7%57.1%10.3%–
F2 · 100–1,00096.6%61.5%13.3%0%0%
F3 · 1,000–10,00043.3%50%26.7%0%50%
F4 · 10,000–100,0000%0%0%0%0%
F5 · 近い大きさの2因数0%0%0%0%0%

毎回同じ回答だったか?

各質問は、プロンプトごとにtemperature 0で3回ずつ尋ねました。それでも回答が異なることは多く、その違い方から各モデルの特徴がよくわかります。

  • UNKNOWNを許可した場合、Claude Sonnet 5.5、GPT-6.1 Sol、Gemini 3.8 Flashの一貫性は非常に高いものでした。 50問中45〜49問で3回とも同じ回答をしており、毎回同じ質問に対して回答を見送っていました。
  • GPT-6.1 Solの正解は運ではありませんでした。 回答必須の場合、21問で3回とも正解し、正解した回数が一部だったのは6問だけでした。
  • Claude Sonnet 5.5の誤答は当てずっぽうに見えます。 29問で3回とも誤った数値を答えましたが、毎回同じ誤った数値だった問題は1問もありませんでした。
  • Gemini 3.8 Flashは同じ間違いを繰り返しました。 毎回不正解だった48問のうち23問で、3回とも同じ誤答をしており、その多くは数をnを素数とみなすものでした。
  • GLM-5.3 FlashXとDeepSeek V4.1 Flashは最も予測しにくいモデルでした。 3回とも同じ回答だったのは、50問中14〜26問にとどまりました。
モデル3回とも同じ回答(UNKNOWNを許可)3回とも同じ回答(回答必須)3回とも正解正解した回数が一部一度も正解せず3回とも誤答:毎回同じ誤った数値
GPT-6.1 Sol4527216235問中4問
DeepSeek V4.1 Flash21261313242問中2問
GLM-5.3 FlashX151462123—
Claude Sonnet 5.54988103229問中0問
Qwen 3.8 Omni Flash20171093118問中7問
Gemini 3.8 Flash4623024848問中23問
50問中の件数です。最初の2列以外はすべて、回答を必須としたプロンプトでの結果です。「一度も正解せず」には無回答の試行も含みます。

代償:誤答

数値の回答を必須にすると、モデルが誤った数値を答えることも増えました。ここでの誤答とは、最小の素因数ではない数値すべてを指します。具体的には、その数を割り切らないでたらめな因数、その数自体(素数とみなした場合)、最小ではない実在の因数です。回答を見送れる場合、GPT-6.1 SolとClaude Sonnet 5.5は誤った数値を一度も答えませんでした。Qwen 3.8 Omni FlashはこのUNKNOWNの選択肢を無視し、どちらの条件でも半数を超える割合で誤った数値を答えました。

UNKNOWNと答えられる場合と答えられない場合の誤答
各モデルの150回答のうち、最小の素因数以外の数値だった割合。
UNKNOWNを選択可数値の回答が必須
020406080100GPT-6.1 SolDeepSeek V4.1 FlashGLM-5.3 FlashXClaude Sonnet 5.5Qwen 3.8 Omni FlashGemini 3.8 Flash
View data
UNKNOWNを選択可数値の回答が必須
GPT-6.1 Sol0%33.3%
DeepSeek V4.1 Flash4.7%14.7%
GLM-5.3 FlashX12%22.7%
Claude Sonnet 5.50%70.7%
Qwen 3.8 Omni Flash54.7%60%
Gemini 3.8 Flash2%98%
回答が必須の場合の、結果別の全回答
各モデルの値の合計は100%です。「nを素数とみなした」は、モデルがその数自体を答えたことを意味します。
正解でたらめな因数nを素数とみなした(nまたは1と回答)その他の誤った因数無回答
01020304050607080GPT-6.1 SolDeepSeek V4.1FlashGLM-5.3 FlashXClaude Sonnet5.5Qwen 3.8 OmniFlashGemini 3.8Flash
View data
正解でたらめな因数nを素数とみなした(nまたは1と回答)その他の誤った因数無回答
GPT-6.1 Sol47.3%7.3%25.3%0.7%19.3%
DeepSeek V4.1 Flash40%2%12%0.7%45.3%
GLM-5.3 FlashX36%11.3%10%1.3%41.3%
Claude Sonnet 5.525.3%65.3%5.3%0%4%
Qwen 3.8 Omni Flash29.3%58.7%1.3%0%10.7%
Gemini 3.8 Flash2%27.3%70.7%0%0%

すべてのモデルが行き詰まる場所

難易度は、最小の素因数の大きさで決まります。ほとんどのモデルは100未満の因数を扱え、一部のモデルは10,000までの因数を扱えました。10,000を超えると、正解を出したモデルは一つもありませんでした。

回答が必須の場合の、難易度別の正解
難易度帯ごとの30回答(10個の数 × 3試行)に占める割合。
GPT-6.1 SolDeepSeek V4.1 FlashGLM-5.3 FlashXClaude Sonnet 5.5Qwen 3.8 Omni FlashGemini 3.8 Flash
020406080100F1 · 因数 < 100F2 · 100–1,000F3 · 1,000–10,000F4 · 10,000–100,000F5 · 近い大きさの2因数
View data
GPT-6.1 SolDeepSeek V4.1 FlashGLM-5.3 FlashXClaude Sonnet 5.5Qwen 3.8 Omni FlashGemini 3.8 Flash
F1 · 因数 < 10096.7%96.7%76.7%86.7%90%10%
F2 · 100–1,00096.7%60%63.3%13.3%50%0%
F3 · 1,000–10,00043.3%43.3%40%26.7%6.7%0%
F4 · 10,000–100,0000%0%0%0%0%0%
F5 · 近い大きさの2因数0%0%0%0%0%0%

モデルは「わからない」をどう説明するか

モデルが挙げた理由の種類はさまざまでした。GPT-6.1 Solは、ほぼ毎回同じ1行の理由を挙げました。Claude Sonnet 5.5とDeepSeek V4.1 Flashは、どの素数を試したかなど、自分が行った探索について説明しました。これらの主張を実際の因数と照合したところ、Claude Sonnet 5.5は115回中114回、DeepSeek V4.1 Flashは26回中26回が正しいものでした。

モデルUNKNOWNと回答(150回中)最も多い理由の種類例(原文のまま引用)
GPT-6.1 Sol133確実にはできないUnable to determine the smallest prime factor reliably.
DeepSeek V4.1 Flash35行った探索を報告manual trial division up to 3000 found no factor.
GLM-5.3 FlashX84行った探索を報告cannot complete trial division to find smallest prime factor.
Claude Sonnet 5.5127行った探索を報告trial division by primes up to 199 found no factor; search incomplete.
Qwen 3.8 Omni Flash0UNKNOWNと回答せず—
Gemini 3.8 Flash146数が大きすぎる/ツールなしCannot factor a 14-digit number without computational tools.
理由は書かれたとおりに引用しています。種類の分類にはAIモデルを利用しました。

trial division by primes up to 199 found no factor; search incomplete.

— Claude Sonnet 5.5、UNKNOWNと回答した際の理由

試行にはコストがかかる

モデルは回答が必須になると、はるかに長く作業し、そのぶんコストも増えます。GPT-6.1 Solの1回答あたりのコストは$0.0065から$0.14に上がり、約21倍になりました。Claude Sonnet 5.5は$0.023から$0.13に上がりました。

1回答あたりのコスト
OpenRouter経由で請求された1回答あたりのコスト(米ドル)。
UNKNOWNを選択可数値の回答が必須
0000.10.10.10.10.1GPT-6.1 SolDeepSeek V4.1 FlashGLM-5.3 FlashXClaude Sonnet 5.5Qwen 3.8 Omni FlashGemini 3.8 Flash
View data
UNKNOWNを選択可数値の回答が必須
GPT-6.1 Sol$0.01$0.14
DeepSeek V4.1 Flash$0.06$0.07
GLM-5.3 FlashX$0.04$0.09
Claude Sonnet 5.5$0.02$0.13
Qwen 3.8 Omni Flash$0.03$0.03
Gemini 3.8 Flash$0$0.01

モデルを自分でランキング

どのモデルが首位になるかは、何を重視するかによって変わります。スライダーを動かして各指標の重みを変えると、ランキングが更新されます。

6モデルを自分の基準でランキング
各指標は、この6モデルの中で最悪の値から最良の値までの範囲に換算し、設定した重みで合算しています。重みを0にすると、その指標は除外されます。
Adjust the weights to re-rank
1GPT-6.1 Sol83.9
2DeepSeek V4.1 Flash75.2
3GLM-5.3 FlashX71.8
4Claude Sonnet 5.562.5
6Qwen 3.8 Omni Flash38.0
5Gemini 3.8 Flash45.1
View data
RankName正解(回答必須、%)誤答(回答必須、%)誤答(UNKNOWNを許可、%)正解またはUNKNOWN(UNKNOWNを許可、%)最も難しい3つの難易度帯での正解(%)無回答(回答必須、%)1回答あたりのコスト(回答必須、$)Score
1GPT-6.1 Sol47.333.3010014.419.30.1483.9
2DeepSeek V4.1 Flash4014.74.764.714.445.30.0775.2
3GLM-5.3 FlashX3622.71280.713.341.30.0971.8
4Claude Sonnet 5.525.370.701008.940.1362.5
5Gemini 3.8 Flash298298000.0145.1
6Qwen 3.8 Omni Flash29.36054.735.32.210.70.0338.0

考察

UNKNOWNには「できない」と「試さなかった」という2つの異なる意味があり得ます。そのどちらが多いかは、モデルによって異なります。GPT-6.1 Solでは、UNKNOWNを許可すると誤答はすべてなくなりましたが、作業に取りかかる前に回答を見送ることが多かったため、モデルが本来持つ能力の大部分も見えなくなりました。Claude Sonnet 5.5とGemini 3.8 Flashでは、UNKNOWNは多くの場合、本当に解けなかったことを意味しており、回答を必須にしても誤った数値が出るだけでした。

プロンプトを書く人にとって、これはトレードオフです。「わからない」を許可すると回答は安全になりますが、正解を取りこぼす可能性があります。モデルにまず試すよう求め、試したうえでのみ回答を見送るよう指示すれば、両方の利点を保てるかもしれません。ただし、この点はまだ検証していません。


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